最近市場で人民元の切り上げ圧力が一段と高まっています。香港の人民元先物(Non-deliverable Forward)市場の1年物が04年11月22日に1ドル=7.86元と、04年4月以来の最高値をつけました(10月29日までの推移は図表参照、データ出所:CEIC)。今回のレポートでは、人民元切り上げに関する中国国内の専門家の見方を紹介したいと思います。
11月22日付けの中国の「21世紀経済報道」によると、Standard Chartered Bank(本部はロンドン、アジア地域で有力な英銀)は11月18日、同銀行が作成した人民元切り上げ圧力指数が114.3となり、人民元レートを変更すべきレンジに入ったと発表しました。Standard Chartered Bankによると、人民元切り上げ圧力指数は中国の経済発展の持続性、国際競争力等を考慮に入れて作成されたもので、1997年1月を100とし、85−111のレンジでは変更しなくてもいいが、111を超えた場合変更すべきだと主張しています。同銀行は、05年に中国政府は現在の1ドル=8.27元程度に固定されている人民元の変動幅を+/-3%に広げ、05年末には1ドル=8.03元になると予測しています。
Standard Chartered Bankの主席エコノミストGerard Lyonsは、「21世紀経済報道」の記事の中で、人民元切り上げのメリットとして次の3点を指摘しています。@04年の中国の貿易額(輸出と輸入の合計額)のGDPに占める割合が70%に達する見込みで、為替政策の重要性が増している。もっと弾力的な為替レート政策は、中国政府が国内市場の構造変化及び貿易相手国の経済構造の変化への対応性を高めるのに有益である。A為替レートの変動幅を広げることは、過熱傾向が続いている中国経済の管理ツールとして市場によるコントロール手段がもう一つ加わることになる。B米国の対中国貿易赤字の増加に対するアメリカ製造業の労働者の反発は大きく、為替レートの変動幅を広げることによりアメリカからの圧力を和らげることができる。
また、中国社会科学院・世界政治経済研究所の張斌氏は、10月23日付けの「中国経営報」の記事の中で、02年以降の米ドル安トレンドの中で1ドル=8.27人民元に固定されている現行レートは明らかに均衡為替レートから乖離していると主張し、現在の人民元レートを維持することのデメリットとして以下の3点を指摘しています。@現行レートでは、輸入財の価格が相対的に過大評価されているため、中国の輸入コストが割高になっている。中国の主な輸入財は原材料とハイテク製品であり、人民元の過小評価は企業の生産コスト増、技術進歩スピードの低下、ハイテク産業における就業機会の減少をもたらしている。A現在の為替制度の下では、海外資本の流入による中国の外貨準備の累増とマネーサプライの増加が続き、インフレ圧力が高まる。このインフレ圧力を抑制するために金利を引き上げると資本移動規制の網をくぐった海外資金がさらに流入し、外貨準備残高の増加とマネーサプライの増加につながるというジレンマに陥る。Bつまり、現行の人民元レートは中国が金融政策の独立性を維持するための障害となっており、中国の健全な経済発展にマイナスとなっていることは明らかである。
人民元を切り上げた場合に発生しうるマイナス効果として、中国の輸出産業の競争力の低下、輸入代替産業の低迷および同産業からの失業者の増加、銀行の不良債権増等が指摘されていますが、プラス効果として上述のGerard Lyons氏の指摘している諸点に加え、中国の著しい経済成長とともに急増している原材料輸入を背景とする輸入インフレ圧力の緩和という点も重要性が次第に増してきているものと思われます。中国政府がいつ人民元相場の切り上げを実施するかは依然不透明ですが、市場では人民元切り上げ圧力が日に日に高まっています。市場では早ければ05年初めという観測も浮上してきております。
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