トピックレポート
  日経新聞の住宅バブルの関する記事の検証  

中国の今年1−10月の累積不動産投資額は前年同期比28.9%増の9,526億元、平均販売価格は前年同期比11.7%増の2,758元/平米と、中国の不動産ブームは続いています。中国の過熱気味の不動産市場の現状についていろいろな見方ができると思いますが、今回のレポートでは、11月27日付け日経新聞に掲載された記事―「中国、進む住宅バブル」(下記の抜粋部分参照)―が最近の中国の不動産市場の実態をどの程度反映しているかにつき、以下の3つの点から検証します。

検証1.「短期的な価格上昇を当て込んだ転売前提の投資が横行。」

・そもそも中国では実需を満たす上で転売行為を必要とする
中国では、建設中のマンションでもデベロッパーが不動産管理局に登記し、不動産管理局の許可があれば、予約購入権を物件の完成前に販売できる。そして、日本と異なり、ローンの返済が引渡し前から始まる仕組みであるため、最初の購入者が引渡しリスク、および金利リスクを全面的に負うことになっている。最初の購入者がこれだけのリスクをとっているわけだから、価格にプレミアムがつくのは当然の話である。つまり、中国では、第2次購入者(実需)が第1次購入者(リスク・テイカー)から転売で物件を購入するごく正常な取引慣行が行われてきたのである。

・新築マンションの不動産権利書の取得前の転売行為が禁止に
上記の制度的理由から、中国では転売がごく正常な取引慣行として行われてきたが、今年4月から不動産権利書の取得前の新築マンションの転売が禁止となった。北京では以前から不動産権利書の取得前の転売行為はできない仕組みとなっている。新築マンションの不動産権利書の取得は物件が完成してから上海で半年、北京で1〜2年程度かかるため、現時点では両都市で新築物件購入後すぐに転売しにくい状況にある。つまり、この政策の実施により新築マンションの転売は抑制されてきている。この点から考えて、転売前提の投資が横行というのは言い過ぎなのではないか。

検証2.「住宅バブルの進行は銀行の不良債権の温床ともなっており、高成長に沸く経済の足元を危うくしている。」

住宅ローンの信用リスクの主な発生要因としては、@住宅購入者の支払い能力の低下、A住宅価格の下落による抵当価値の低下、B住宅ローン返済モラルの欠如の3点が考えられる。同記事はB点目の返済モラルが欠如した購入者、銀行担当者、業者が「仲間」の関係にある構造が不良債権の温床になっていると説明している。近年の中国の住宅ローンの急増に伴い、住宅ローンにからむ犯罪行為も増加しているようであるが、不良債権の温床というのは言い過ぎなのではないか。

・中国人民銀行による不良債権の監視強化
たしかに今後、中国経済が不況に陥った場合、@実質所得の減少などによる住宅ローン支払い能力の低下、あるいはA不動産価格の下落による銀行の抵当権価値の下落を背景に不良債権が増加するという潜在的リスクが存在することは否定できない。

しかし現在、中国の1人あたり可処分所得は中国のマクロ経済の高い成長率とともに増加傾向にあり、銀行の抵当権の価値も住宅価格の高い伸び率とともに上昇している。また、中国の金融当局による不良債権の監視体制及び銀行内部のリスク管理システムも強化されている。2003年6月には中国人民銀行(中央銀行)より「不動産貸出し業務の監督強化策」が出され、二軒目以降の住宅購入の融資条件も厳しくなり、上海では1軒目の融資額は住宅購入額の最大70%に対し、2軒目以降は最大50〜60%以下となっている。つまり、現時点では住宅ローンが大量に不良債権化するような状況ではない。

検証3.「広東省深センでも53%が二軒目以降の購入との調査があり、目的は明らかに投機だ。」

・投資と投機の区別
同記事は中国の都市部では二軒目以降の住宅購入が5〜8割を占めると指摘している。しかし、二軒目以降の購入者は、投機(短期転売)を目的とする購入者と投資(長期保有)を目的とする購入者に分けられる。

中国の経済成長と共に、中国でも富裕層が増えてきた。この富裕層の中で、低金利(1年物・定期預金2.25%)、インフレ圧力(今年の1−10月期・前年同期比4.1%増)の高まり、株式市場の低迷等を背景に、不動産投資という資産保有形態に注目し「投資」を行っている人も相当程度いるであろう。この点から考えて、明らかに投機というのは言い過ぎなのではないか。

中国の不動産市場の最近の状況については、いろいろな見方が可能だと思いますが、同記事は一部誇張しすぎている面がみられるややバランスを欠いた記事といえるのではないでしょうか。


<本記事の抜粋>
11月27日付け日経新聞(朝刊)に掲載された
「中国、進む住宅バブル」偽造証明書が横行―業者・銀行員も「仲間」、不良債権の温床に

(記事の冒頭部分)
・中国で住宅投機が過熱している。都市部では二軒目以降の住宅購入が五―八割を占めるなど、短期的な価格上昇を当て込んだ転売前提の投資が横行。住宅バブルの進行は銀行の不良債権の温床ともなっており、高成長に沸く経済の足元を危うくしている。

(記事本文の第2〜4段落部分)
・黒竜江省チチハル出身の彼は2002年末に北京に来た。まずサッカーアジア杯で日中が戦った工人体育館近くの高級マンションの二部屋を購入。翌年にも近隣のマンション一部屋を買った。購入価格は総額で五百五十万元(約六千八百六十万円)。元手はほぼゼロで銀行ローンに頼った。関係したマンション業者によると、一部屋を知人に転売し、二十二万一千元の利益を得た。残りの二部屋について銀行はローンの未返済分だけ不良債権を抱え込んだ。マンション購入に必要なのは勤務証明と資産証明などだが、彼の場合、すべて偽造だった。

(記事本文の第9段落部分)
・広東省深?でも53%が二軒目以降の購入との調査があり、目的は明らかに投機だ。

以上

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